伝統産業における職人になるには。それは、長きに渡って守られてきた伝統と技術を引き継ぐことから始まります。その方法は一つではありませんが、取材で実際に職人の道に進まれた先輩職人の声をもとに「こうすると良いよ!」「これはやめておいた方が...」といったことをお伝えし、少しでもお役に立てるような情報を発信できればと思います。


世襲制からの志願制へ
これまで職人の世界では、世襲制といって職人の家に生まれた者が親の跡を継いで職人となる形が一般的でした。しかし、それが今では変わってきて、自ら弟子入りを志願する、もしくは学校等で学んで職人を目指す人が増えています。 安定(比較的)した会社組織を離れ、フリーランスとして働くことが当たり前となってきた現代の日本において、これは自然の流れであると感じます。しかし、ブラック企業だ何だと言われている昨今において、厳しい世界であることには違いありません。その世界で一生食べていく覚悟があるか、最後はそこに尽きると思います。

職人への道は1つではない!
職人の世界に限りませんが、その道を極めるための確実なレールを敷いてくれる、そんな親切な人や場所はありません。土地に根付いた技術を学ぶ必要があるので、移住する必要も発生するかもしれません。(養成期間として、自治体などが一部金銭面を補助をしてくれる場合もあるようです)そんな中、少しでも早く一人前の職人として生計を立てて生活していくことができるようになるためにはどうすれば良いのでしょうか?
以下にいくつかの方法をご紹介します。数ある方向性から自分にあった道を複合的に選択し、行動していくことが将来の自分を構成する大事なファクターになるのではないでしょうか。
弟子入りする
長い間その業界の第一線で生活をしてきた師匠の姿を最も近い場所で毎日見ることができるメリットは大きいでしょう。 これは、技術もそうですが経営者として必要な知識や考え方、さらには職人としての生き様といったところまで、肌感覚で吸収することができます。
しかし弟子入りといっても、お願いして「はいどうぞ」といった簡単なものではありません。職人の方にも様々事情があり、金銭面や高齢化による体力の衰え、時間的余裕、自身の生活を守らなければならないといった理由から断られることも少なくないようです。また、職人さんの中にはホームページを持っている方もいますが、ほとんどは目立たずにひっそりとやられている方が多いです。そのため、ネットで検索してもどこにお願いしたら良いのかわからない場合も考えられます。その場合、地方自治体や支援団体が運営している窓口に問い合わせてみるのが良いでしょう。 また、弟子入りして学びたいという方は是非"超一流"の師匠から学んで欲しいと思います。その業界でやってきたということが証明するように、皆さん例外なく一流の職人であることは間違いないですが、その中でも、自分で会ってみてこの人に付いて行きたい!と心の底から思えるような人から学んでください。超一流のものを生み出す職人さんは超一流の技術を持っています。弟子入りするということは、自分の人生を預かっていただくということ。とる方はもちろん、あなたにも重大な責任と結果が返ってくることになります。ここは絶対に妥協するべきではありません。
学校で学ぶ
【美大・芸大・専門学校】
技術という点では、卒業してそのまま通用するかと言われれば難しいかと思いますが、ものづくりを生業とする上での美的センスや考え方、そして何より人の繋がりを作り易い環境であることがメリットとして考えられます。
また学生のうちは比較的時間がありますので、職人となった後に自分を売り込める術を身に付けておくと良いかもしれません。例えば自分でチラシを作るためのデザインソフトであったり、ホームページを作るためのWEBの知識をつけておくと役に立つでしょう。 また大学や専門学校以外にも、地方自治体や企業が独自に運営しているスクールもありますので、気になる方はネットで色々と検索してみるのも良いかもしれません。
【職業訓練校】
職業訓練校は管轄により、下記の2つに分かれています。
①厚生労働省が管轄する職業訓練校 ②各都道府県が管轄する職業訓練校 基本的には無料で行われているものがほとんどですので、負担が少なく済み、それでありながら本格的な技術を学べるメリットがあります。
地域によっては人気のある訓練校もあるようで、入るのが難しい場合もあります。
例えば、東京都では『職人塾』といった職人の指導のもと高度な技術を学ぶことができるプログラムを行っています。
こういった、地域が独自に行なっている取り組みには様々な特色がありますので、自分にあった取り組みを見つけるアンテナも重要になってきます。
就職する
メーカーや工房に就職して職人となる方法もあります。会社の規模や内容によって、進む方向は大きく変わってくると思いますので一概にはこんなメリットがあるというのは言い切ることはできませんが、給料が保証されているという利点は大きいでしょう。ネットで検索すると、その業界の老舗や新しい人材を募集している会社がヒットしますので、そこへ話を聞きにいったりしてみると良いでしょう。
独学で勉強する
現在の生活を守りながら自分のペースでもの作りを行っていきたい方にはリスクも少なく、良い方法と言えるでしょう。 しかし、自分の頭の中で考えることと実際の現場では想像以上の違いがあります。独学で学んだことがそのままプロの世界で通用するとは思わない方が良いでしょう。なので、独学で学んだ後に、弟子入りする人や学校で学びなおす人も多いようです。

ものを作る技術+α
職人を目指す人の多くは、将来的に個人で独立することを考えているかと思います。独立して個人事業主としてやっていくためには、ものを作るために必要な資材を仕入れ、出来上がったものを販売するルートを開拓していくことが重要になってきます。個人でもの作りをしていくためには、多くの時間をもの作り以外のことに割く必要があるのです。
会社員ならばやらなくても良い経理のことや、営業活動、備品管理まで全てを本来の仕事と並行してやっていかなければなりません。
また、最初から一流の技術を身につけ、それだけで食べていける人なんてそうそういません。実力をつけながら生活をしていくためには自身の技術の段階によって、それを発散させる場が必要になります。技術は未熟でも企画力や独特な発想に価値を見出してくれるお客さまがいるかもしれないのです。そのためには、SNSやHPを利用し、自分を発信していくことも大切になってくるでしょう。 『伝統は革新の連続である』
これは羊羹の老舗「虎屋」社長、黒川氏の言葉ですが、伝統を守り続ける一方で時代の流れを的確に読みとり、変化する部分も必要ということだそうです。自身の強みとなる部分を見つけ、今自分がいる場所を認識することで、職人として更なる高みを目指せるというヒントとなる言葉かもしれません。

自分の心の声を大切にしよう
先にも述べましたが、職人の労働環境は特殊な部分も多々あり、非常に厳しいものでしょう。それでもその道で生きていくという覚悟と、死ぬほどに好きという気持ちがあれば労働環境なんて関係なくなってしまう。そんな業界のようです。 時勢の流れからみても、一般企業の終身雇用制度は崩壊し以前ほどの価値はなくなっています。そんな中、希少性の高い技術を身につけ、自分にしかできない唯一無二の仕事で生きていきたいと考える人にとって、職人の世界は魅力に溢れています。 職人の世界に飛び込もうかどうかと悩んでいる方は、今一度自分の心の声に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。